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大阪高等裁判所 昭和49年(行コ)7号 判決 1975年2月28日

吹田市山手町四丁目一三番三〇号

控訴人

明原常一

右訴訟代理人弁護士

峰島徳太郎

大阪市東区大手前之町一番地

被控訴人

大阪国税局長

山内宏

茨木市上中条一丁目九番二一号

被控訴人

茨木税務署長

田村英雄

右被控訴人ら指定代理人

井上郁夫

河口進

福島三郎

河本省三

筒井英夫

右当事者間の裁決取消並びに所得税等決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人茨木税務署長が控訴人に対し昭和四三年八月八日付でした控訴人の昭和四一年分所取税の総所得金額を金二八一万一、七八二円(裁決で一部取消された後の金額)とする再更正処分のうち金六九万五、〇八五円をこえる部分及び無申告加算税賦課処分を取消す。被控訴人大阪国税局長が控訴人に対し昭和四四年四月二日付でした裁決を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の関係は、次に付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴人の主張

租税特別措置法(以下措置法という。)三五条(昭和四四年法律一五号による改正前のもの)一項の規定は、同項二号に該当する事案においては譲渡所得の課税繰延べではなく、課税を免除するものである。同条は困窮した住宅事情に鑑み国民に住宅建設を促進せしめ、その代りに課税を減免し納税者にとって国家政策上有利に取扱うことを趣旨としているもので、同条の適用を納税者の自由意思に委ねたものではない。同条適用についての納税者の申告は、買換事実の調査を容易にならしめるため申告制度の範ちゆうに入れたに過ぎない。したがって、納税者の申告は厳格に解釈すべき手続要件ではなく、期限後申告によっても容易に同条適用の意思を表明しうるものである。

被控訴人らの主張

措置法三五条一項の適用については、同条三項の規定によると納税者の申告手続が必須の要件であることは明らかである。又同条一項の規定が同法三七条との関連においても課税の減免ではなく課税の繰延べであって、同法三五条所定の制度を利用するか否かは納税者の意思に委ねられているものである。

証拠

控訴代理人は、甲第二五、第二六号証を提出し、当審証人田村哲郎の証言を援用し、乙第七号証の一、二、第八号証の各成立を認めると述べた。

被控訴人ら代理人は、乙第七号証の一、二、第八号証を提出し、甲第二五、第二六号証の各成立を認めると述べた。

理由

当裁判所は控訴人の本訴請求を理由がなく棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決九枚目表五行目の「証人」の前に「原審及び当審」を、同六行目の「米田一郎」の前に「原審証人」を、同行の「結果」の次に「(一部)」を、同九枚目裏末行の「説明をしたが、」の次に「右両日とも右関係書類を持参することなく、」を、同一〇枚目表二行目の「至ったものである。」の次に「前記控訴本人尋問の結果中右認定に反する部分は前記各証人の証言に照らしにわかに採用し難い。」をそれぞれ加えるほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

よって、右と同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中島孝信 裁判官 阪井昱朗 裁判官 宮地英雄)

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